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ひょんなご縁で紹介していただいた東レの人工皮革のウルトラスエード®︎(Ultrasuede®︎)。

恥ずかしながらそこまで歴史があったとは存じ上げなかったのですが、じつは1970年代から展開されている商材だそうです。

すばらしい素材で、ご紹介いただいたこちらを使って何か作れたら良いなと思いつつ、どんなかたちに仕立てるのがウルトラスエード®︎という素材にとってよりふさわしいのか(かっこいいのか)を考えはじめると、なかなかにプレッシャーが邪魔をしました。

やみくもにチャレンジするのも良いですが、まずは人工皮革のメリットとは何かを考えてみることがその魅力を引き出す近道につながると思います(その際、天然のレザーのデメリットは何かを考えることは、そのまま人工皮革のメリットへと転換するのかもしれません)。

天然皮革の面白いところは、一枚一枚表情が違うということがあげられます。

それはそのまま個性にもなりますが、均一性という観点からみると、盤面の状態が良い時と悪い時の差があるということが前提となりますので、毎回ロットによるばらつきなどを覚悟しないといけません。

それは要尺にバッファを持たせる必要が出てきます。

その点、人工皮革は計算可能性が高く、品質も安定しているということが望めます。

つまり、より生産計画も立てやすい。

そして均一な盤面を広く使えるというメリットは、大型の製品(カーシート、インテリア)に適しています。

そこで、ウルトラスエード®︎の人工皮革としての美しさ・素晴らしさを全面に強調するとすれば、それは製品の盤面を切り返しや縫い繋ぎなどを多用せず、なるべく一枚で展開することがふさわしいのではないかと考えました。

もちろん、クセがない・素材としてのばらつきがほぼない、ということは無個性なのっぺらぼうの印象を与えるだけに終わってしまうのではないかという危惧もあります。

しかしながら、そこは東レの技術力。

ウルトラスエード®︎が、国内の数々のアパレルブランドにも採用されていることからも、その芸術性を物語っています。

しっかりと表情が作り込まれ、きめ細やかさと上質さを醸し出す独特な雰囲気をまとったファブリックに仕上げられています。

今回はいちばん厚みのあるDuplex(DP)というシリーズのMix Grayというカラーを使ってみました。

ハンドルは強度を出すためにも2枚貼り合わせましたが、それ以外は一枚で仕立てています。

マチと本体胴とのまとめには、シーム(縫い目)を見せる外縫いと、シームを見せないで縫ったあとにひっくり返す内縫いの仕上げが考えられます。

今回製作を進める前に、素材としてのくせを試すために部分的なパーツの試作をしました。

適度なハリとコシがあり、そのあまりの内縫いの仕上がりの素直さ・綺麗さに驚きました。

人工素材のウルトラスエード®︎だからこそ、金太郎飴のようにどこを切っても同じハリ・コシを期待できるわけで、裁断においては長尺ものや面積の広い製品には大いに助かることころです。

天然素材の皮革ではこうはいきません。

ということで、今回は内縫いを採用することに。

地縫いのあとに、グログランテープでバインディングします
ひっくり返すと、きれいに内縫いの表情が!

本体・胴には切り返しや縫い繋ぎがないため、ハンドルには意匠を凝らすことにしました。

ハンドルは二枚貼り合わせましたが、そこにミシンでまっすぐにステッチを入れるのではなく、ジグザグに縫っています。

そうすることによって肩から提げたときや、手で提げたときにハンドルのジグザグステッチがほどよいアクセントとななり、シンプルな胴にたいする適度なアレンジメントとなってくれていると思います。

熱プレスによる刻印もはいりました

今後の課題としてはマチと本体・胴の縫い合わせの口元トップの処理にはもうひと工夫欲しいところです。

また、内縫いではなく外縫いでの仕上げも違った表情がでてくるでしょうし、それも気になるところ。

DPシリーズの他にも厚みが薄いものが数種類リリースされていますから、薄手のものをテープとして裁断し、バインドテープとして利用してみたりということも考えられます。

また今回の新作バッグにとどまらず、断ち切りのままで成立する素材ですので、その特性を活かし、編み込んだ付属パーツなんかも想像できて、ひじょうに可能性の広がりを見せてくれる素材だと思いました。

しばらくこのサンプルバッグの使い心地を試してみて、本番へとうつりたいと思います。

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